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2006年03月11日

蔵出し駄文企画その2


 薄暗い灯りの元で一人、長々と文字を辿る作業に少々厭いて。予定された合議の刻限にはまだ遠く、気分転換と光を望んで部屋を出た。しかして広く立ち込める雲に、冬の日差しはあまりにも弱々しく。

 今年も辛い季節が来た、と――あれは今朝方、殆ど頭まで被った上掛けから出ることを、散々渋った彼の方の姿を回想しながら、そう独りごちる。

 一年で一番寒い、この時期。不足分は人肌から搾取するのが最も手取り早いとの御考えか、二人になると子桓様は決まって、暖を求め御身を擦寄せてこられる。無論こちらとしては喜ばしい限りだが、流石に四六時中、腕の中で暖めていて差し上げる訳にもいかない。

 尤も。あの方によれば私の体温は、襤褸や蛙よりは幾分まし(凄い喩えだ)、といった程度でしかない低さだそうで、それでも相乗的に生じる温もりが何とか及第点に達するまでしばし、ひときしりの文句を拝聴する羽目になるのだが。自侭と言えば自侭な主張、容赦無い悪口も理不尽な雑言も確かに和らいでいく吐息もただ、嬉しく愛おしいばかりで。思い返しただけでつい緩んでしまう頬に、何となく掌をやったその時。


「――何を御思案中ですか、仲達殿?」

「何って勿論……―――って、ちょ、長文殿っ!?」


 背後からの声。遠く漂わせていた視線を戻せば、すぐ目前に年長の僚輩が佇んでいた。甘い回想に耽っていた所為か迂闊にも、これ程近くに来るまで全く気付かず、思わず無様に狼狽えてしまう。

「すみません、驚かせて。一応、遠巻きに声はかけたのですが…お気付きでなかった御様子で」

 何時から見られていたのか。先の自分は、さぞや腑抜けた表情をしていたに違いないだろうに。内心の動揺を極力表面化しないように、私は必死で努めた。

「あ、ああ…いえ、私の方こそ失礼を――…御用でしたか?」

「ええ、部屋から出て来られる所を拝見したので、先日の案件について少しお話を、と…――ですが、お邪魔でしたでしょうか、やはり」

「……い、いいえ、全く……」


 ………そんな前から。


 気遣わしげな微笑も、落ち着いた調子の声音も。今は衝撃にしか感じられず、眩暈を覚えつつやっとそれだけ口に出した。

 とは言え。この聡明な僚輩の、繊細な思慮をもってしても、当方が何を考えていたかなど知れる筈もないだろう。ましてや実直誠実そのものである彼の思考からすれば、全く予想の範疇外に違いない。それでも子桓様の数少ない、良き理解者を前にしてこの種の想像に没頭するのは、無論疾しい気持ちがある訳ではないが、何やら居た堪まれない心地がした。立ち直りきれはしないままに、取り繕う。

「ただ、その――…すっかり寒くなったものだと」

「そうですね、ここ数日で急に。この空模様では、日輪も拝めませんし」

 稚拙な言い訳に、誤魔化されることにしてくれたらしい。苦笑と感謝を込めて見遣る先、深慮を誇る僚友は、欄干越しに天を見上げて嘆息した。

「これはそろそろ降ってきますね。初雪、になるかな」

「……初めて――でしたか?」

「ええ、確か。ですがこの寒さ、今日はおそらく――…え、仲達殿?」

 呼び止められて、弾かれたように踵を返しかけた自分に、初めて気付く。足を止めて振り返ったものの、胸に湧き上るのは弁解ではなく、留め様もない焦燥だけで。それは突如、鮮明に脳裏へ蘇った残像への。

「申し訳ない、長文殿。先のお話ですが、後程改めてお伺いする訳にはいきませんか」

「それは、構いませんけれど――」

 知らず逼迫さを帯びる物言いに、相手が僅か怪訝な表情を見せる。今日は本当に、礼を失してばかりだ。私はもう一度心から謝罪して、それでも一礼する時間ももどかしく、殆ど走り出したい気持ちで回廊を抜けた。



+++


……ハイ、そんな訳で前回に引き続きましてPCすみっこ発掘物件晒しですよ~☆
ボツネタ救済企画イヤむしろラクすんじゃないよおまえはって云う


今回は三国志・懿丕であります、と云うか仲達氏+長文殿、ですか(笑)
実は小説部屋の「雪」連作、「誓雪天」の前段として使おうと思ってた文章。
書いてる内にノリが軽くなってしまったので、と云うか正直
呟 き仲 達 さ ん た ら キ モ さ 大 爆 発 ニコッ
だったもので(えぇー)削ってみたのでした。
淡々仕様で統一したほうが良いかなーと

そんでまあ、いつか他の話に挿入して再利用できるかなー(貧乏性)
と云うことで今までとっておいた模様なのですが、
結局日の目を見ることもなさそうなのでこの機に…とか云いつつこの先
ドコかでさり気に使用してたらば鼻で笑ってあげてください(笑)


「雪」連作収録本にも描いてますが、わたしイメージではとことん寒がり子桓様。
寒い寒い冬、仲にとっては至極シアワセな季節な訳です。
良かったね仲達、て云うかキモi(ry

そしてやっぱり、長文殿書くのスキだなあ。癒しだ…(ホンワリ)
コンビで書くと(「詩伯」とか)仲達が珍しくも後輩若輩モードで楽しいです。
あーでも思えば、朗兄とセットで弟属性全開も楽しかった描いてて。



………とことんヘタレスキーなのな、わたし(笑)
でも鬼畜とかも書きたいんだけどなー


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by 榎柴 潮 : 19:27 | Res (0) | 懿丕

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