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2005年06月23日

『蓮花抄』

 薄明の汀、私は探す。

 静謐を犯して啼く蓮のこえを。
 幽かな其れを戯れに待つ睡余の瞳を。



 焦渇の果て、私は見出す。

 仄暗き水面を淡紅に染め抜く魁の蕾を。
 誰より先に気付いては、童子の如く喜ぶ貴方が、

 貴方がもう、



 此処に居ないと云う現実を。





 咲き誇る花。
 風の馨り。空の色。
 嘗て貴方が愛し、共有した物共。

 独りで抱けば砂の如き追憶を、
 けれど数え連ねずには居られ無い。
 触れる度に灼き苛む絶望、
 手放せる筈も無い、其の痛みは何処か浄福にも似て。



 「………御覧に、なっておられますか…?」



 零す呟きが届く様な。
 魂が慟哭する瞬間、刹那訪れる是の錯覚。

 風流を解さぬ私の無粋を、貴方はいつも揶揄して咎めた。
 今更何をと、貴方は叱るだろうか。
 其れとも呆れ笑って下さるだろうか、
 一輪綻ぶ蓮花に乱れて縋った、
 埒も無い是の哀れな姿を。





 時は移ろう。
 貴方を奪った季節が、復た廻る。

 是世の全てが飽かず私を拉いでゆく。其れでも。





 生命せい在る限り、私は求める。

 貴方が遺した貴方の欠片を。

 永劫貴方に繋がれる証、其の愛しきを。



+++


如何にか間に合いました子桓様御命日記念。
子桓様死後、遺された仲達氏視点SSです。


叫んで掻き毟る様な絶望と、
でも何処か静謐な温みを目指したかったのですが…如何でしょうか。
暗いですか?…すみません(土下座)
子桓様死後話を書くのは初めてで、時間も足りず
納得行かない点も若干あるのですがとにかく一生懸命書きました。
(ちょっと一人で泣きそうなってた/阿呆です)
最初の案では長文殿との対話&回想話だったのだけど。
そちらもいつか是非リベンジしたいです。

季節柄、また自分が好きなので蓮をモチーフ選んだのですが
(しかし実際は咲くとき音しないみたいですね >_<)
後で見たら花言葉のひとつに「神聖」「離れる愛」なんてあったりして
結構合ってるかもと思ったり。
けれども仲達の想いが子桓様から離れる事は決して無いのでしょうが。


読んで下さり有難うでした!


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by 榎柴 潮 : 23:25 | Res (0) | 懿丕

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