薄明の汀、私は探す。
静謐を犯して啼く蓮の音を。
幽かな其れを戯れに待つ睡余の瞳を。
焦渇の果て、私は見出す。
仄暗き水面を淡紅に染め抜く魁の蕾を。
誰より先に気付いては、童子の如く喜ぶ貴方が、
貴方がもう、
此処に居ないと云う現実を。
咲き誇る花。
風の馨り。空の色。
嘗て貴方が愛し、共有した物共。
独りで抱けば砂の如き追憶を、
けれど数え連ねずには居られ無い。
触れる度に灼き苛む絶望、
手放せる筈も無い、其の痛みは何処か浄福にも似て。
「………御覧に、なっておられますか…?」
零す呟きが届く様な。
魂が慟哭する瞬間、刹那訪れる是の錯覚。
風流を解さぬ私の無粋を、貴方はいつも揶揄して咎めた。
今更何をと、貴方は叱るだろうか。
其れとも呆れ笑って下さるだろうか、
一輪綻ぶ蓮花に乱れて縋った、
埒も無い是の哀れな姿を。
時は移ろう。
貴方を奪った季節が、復た廻る。
是世の全てが飽かず私を拉いでゆく。其れでも。
生命
貴方が遺した貴方の欠片を。
永劫貴方に繋がれる証、其の愛しき寄す処
曹丕命日記念、遺された司馬懿視点な短文です。
曹丕死後話は初めてでまだまだ消化不良気味ですがすみません。
叫んで掻き毟る様な絶望と、でも何処か静謐な温みが表現出来てるといいんですが…。
ちなみに蓮の花言葉は「神聖」「離れる愛」だそうです。合うなぁ。