酔 蜜

腰骨のかたちを丹念に辿っていた舌が、屹立する先端へと移動する。
甘く噛み嬲られ、其れは既に予想していた行為ではあったのだけれども、
背筋に奔る感覚は如何仕様も無くて。
反った喉で知らず零す掠声を聴きつけたのだろう、
含んでいたものを僅か解放して、薄い唇が音を紡いだ。

「―――子桓様…?」

許可を求める様な宥める様な。
…否違う、悦楽の萌芽をただ確認しているのだ、是の男は。
迷わぬ丁寧な手管と、穏やかで獰猛な微笑。
此方が何を云う前に。
何処か生真面目な風情でまた作業に没頭し始めた、其れが証拠ではないか。

己の官能の在処を、最奥に隠した筈の本心も何もかも、
相手に余さずられている事実に改めて、頭の芯が熱くなる。
震えて痺れる様な、是れは羞恥なのだろうか―――それとも。

「…腹…立たし、い…っ…」

酔う様な吐息も、滑る内腿の感触もあえて意識の埒外に置いて。
如何にか云い捨てた悪態すらも敢無く、繋いだ唇に絡み取られた。





射干玉ぬばたま色の宵の闇。
其処だけ抜けるしろい肢体、掻き抱く度撓って火照る。
手放されゆく意識を促したいのか引き止めたいのか。
判じ兼ねてけれど堪らず、濡れた吐息ごと唇を貪って。

例えば其れは 荒野で蜜を吸う如く。

濃密で甘美な芳潤に、理性が崩れてゆく。
味わう程に増すばかりの渇き、
然うとっても求望せずには居られない。
精神も肉体も浚う極上の誘惑に、誰が耐え得ると云うだろうか。

互いの温度で境界は曖昧ぼやけ、触れて繋がる場所から混じり合う錯覚。
蠢く襞の熱さに煽られる侭、どろりとした情欲を更に奥へと注ぎ込む。

「―――ァ…仲、ッ……」

甘く甘く掠れて、響く嬌声こえ
掻き弄られた脳髄が、愉悦に蕩けて痺れ。
魂ごと奪い取られる陶酔、
呼吸が止まらぬ事が不思議な程の。
かいなに閉じ込めた存在以外、世界の一切は喪失する。
収斂しては溢れる感情、畏れにも似た福沢に眩暈を覚えた。

溶けた部分を擦り確かめれば、露に震える滑やかな首筋。
噛み舐りたくなる狂暴な衝動を如何にか抑え、彷徨う指を重ねて絡めて。
埋める隙間など無い様に、隔てる輪郭かべなど無い様に。


「…………子桓様―――……」


恋情も慈憐も誠愨も、
劣欲も贖罪も畏怖も何もかもが此処に在る。
低く囁く、是れは誓約。

至高の御名。


唯、貴方だけを。

閨事ポエム(ぇ)。前半が曹丕、後半は司馬懿視点でどうぞ。
珍しく頑張って艶っぽい感じ醸し出したかった(笑)…どんなもんでしょう。
とりあえず司馬懿さんは喋り過ぎだと思うの(脳内)