愛ではない。そう思う。
「まだ、寝てて良いよ」
燻らす煙の向こう。燭台の薄灯りに白く滑らかに煌る裸の肩へ、僕は囁く。
「………のど、渇いた」
「酒でいい?」
「ん」
気怠げな応えに、寝台脇の瓶を手に取る。そのまま口に含んで、相手の細い顎を上向けた。
「……ふ。……ん、く」
唇越しに、艶やかな吐息を味わいながら。白い咽喉が淫らに動くのを、ぼんやりと眺め遣る。
熱い液体を全て嚥下し、小さく一息吐くと、幼馴染はうっすらと瞼を持ち上げた。唇から首筋へと走る細い流れを、指で掬ってやる。
「………甘」
「子桓、好きでしょ」
「…ん…」
未だ、夢現の境にたゆたう瞳。何かを追うように伸ばされた白い指を捕らえて口元へ運べば、彼は安心したようにその睫毛を伏せた。そのまま、細い肩をそっと抱き寄せる。
幼いあの日。
出会ってから幾つ、こんな夜を過ごしてきたのだろう。
寄り添って眠る。温もりを求めて。満たされない心の隙間を、互いに補うように。――舐め合うように。
身体を重ねるようになってからも、それは変わらない。いや、むしろ。
身体を繋いで。
溺れる快感も苦痛すらも、全ては虚妄に過ぎないのだ。
枕元の杯を取り上げて。残った透明の液体を、一気に流し込む。
「――甘い、なぁ…」
口当たりの良い、飲みやすいだけの、甘い酒。
「……僕みたいにね」
ただ――それだけの存在
自嘲。空になった杯が、落ちて砕けた。
互いの目を塞ぎ。慰めあって。
もう一人の自分に溺れる、安堵感。充足感。至福にも似た、
まやかし、の。
「ん……」
乾いた音に身じろぐ相手の髪を、そっと梳いてやる。
穏やかに見えるその寝顔に、癒されるのは自分の方。例えそれが、錯覚だとしても。
――愛ではない、と思う。
麻薬にも似た、甘い酒。
それは理解っている。きっと二人共。けれど。
それでも。
今この瞬間だけは、
酔い痴れることが出来るから。
郭奕×曹丕。曹丕の「初めて」は郭奕だけど、恋人とかではありません。
多分2人は色々と似過ぎていて、理解し合える分きっと救われないのだろうと。
特に郭奕には突き抜けちゃったと云うのか「諦観」のイメージが強くて、
心の奥底では実は満たされたい、変わりたいと願う曹丕を本当には受け止めきれない感じ。
無論、こうして甘く生温く逃避し合える相手が居たのはある意味で癒しだっただろうし、
お互いが大切なお互いの為に、何でもする用意ならあったとは思うのですが…うーん説明難しい(笑)