...そしてその夜。
暖色系の薄明かりの下。
少し気だるそうに、淡く
晧く
煌(る腕がベットサイドへゆらりと伸びる。
余程嗜好に合ったのか、
宵(に至るまでにはもう殆ど綺麗に食べ尽くした甘い菓子。
粉糖塗れの指先を無意識に舐める、そんな稚気に溢れた仕種がただ愛しくて堪らずに。裸の肩を抱き込んでくる男へと、今度は逆らわずに大人しく身を委ねた子桓が、思い出した様に呟く。
「――そう言えば…初めてだな、チョコなんて貰ったの」
「―――――は?」
返す言葉は思いきり、頓狂な声になってしまって。
鼻先で憮然と歪む柳眉、しまった、と仲達は内心舌打つ。
「…ええと……今まで、一度も、ですか?」
「ああ、義理以外は。…………何だ、悪かったな」
「い、いいえ!ただその、意外と云うか―――」
納得と云うか。
高校までずっと男子校通いだった所為もあるだろうが、子桓に直接チョコなど渡せる強者はなかなかいないかもしれない。――尤も、彼が「義理」と見做した何割が実際、渡した側からすれば本命チョコだったのだか、今となってはわからないが(おそらく相当数だろう)。
ちなみに仲達はと云えば。まだ(比較的)いたいけだった学生時代には一応、人並みに貰っていたりもするのだが、幸運にも訊ねられはしなかったので黙っておく。
「まあ良い。――来年は欲しいか、お前も?」
どうやら好物が功を奏したらしく、左程気分を害した風でもない子桓である。相手の胸へ伏せたまま、戯れに囁いた。
「甘いのが駄目なら、他の物とか。何が良い」
「無論、貴方が下さるなら何でも。――ああでも、その前にホワイト・デーというものもあるんですよ」
「ああ…そうか、等価交換か。またチョコを贈るのか?」
「マシュマロやキャンディですよ、確か。クッキーとか。しかも、相手に対する好意の度合いで、何を贈るか決めるらしいと聞いていますが」
「………面倒だな」
さりとて自分は、お返しなどしたこともない癖に。
職業柄か、相手が有する妙な博識に、子桓が顔を顰める。存外、不精なのだ。
「お任せ下さい、ちゃんと調べて進呈致しますから。とりあえず、お嫌いな物はないですよね?」
「お前が返してどうするんだ…」
矛盾だろうと呆れて。
僅かに身を起こし覗き込む頬を、艶やかな髪を梳いて、長い指が引き寄せる。そして。
「――私も充分に頂きましたから、ね」
未だ甘く芳しく馨る唇。
愛撫する様に、ぺろりと舐め上げて。
御馳走様でした――得たりと笑うと、仲達は嘯いた。
the Happy END
&
Happy Happy VALENTINE ゥ