SCENE 1
「………………」
昼下がりのオフィス。腹心の部下の、机の前。
閲覧したい書類があったのだが、所持する相手は生憎の不在。それではと、勝手の知れた抽斗を無造作に開けたそのままの格好で、曹子桓は固まっていた。
軽く見開かれた瞳に映るのは、整然と並ぶファイルの列、ディスクラベルには鋭角的な見慣れた文字。それから。
――何だ、これは。
思わず口に出して呟いたことに、子桓は気がついていない。細い指が、スローモーションで伸ばされる。
「……子桓様?」
「―――っ!」
遠慮がちに。背後からかけられた声に、びくりと振り返る。見れば、部署のスタッフの一人、陳長文が書類を抱えて佇んでいた。相手が昔馴染みの、信頼も篤い部下であったことに安堵しつつ――同時に自分が何故安堵しなければならないのか不思議に思いながら――子桓はぎこちなく微笑った。
「あ…ああ、長文…」
「仲達殿ですか?先程までいらしたのですが…探してきましょうか」
「い、や…いいんだ、また来るから。じゃ――」
畳み掛けるように喋りながら、書類の束を無造作に掴んで立ち上がると、子桓は慌しく部屋を後にする。常とは違いすぎる上司の様子を訝しげに見送る長文だったが、聡明な彼にもその理由を推し量れはしなかった。
子桓の腕の中、書類に紛れて抱えられた小さな包みの存在も。
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