「あと15分、ですね」
気に入りの寝椅子に深く凭れ込んだ姿勢で。
ぼんやりと頁を繰っていた子桓の意識を、芳香が擽り引き戻す。
勝手の――確実に持ち主の子桓以上に――知れたキッチンからリビングへと、長い指が運び供した2つのカップ。
子桓お好みの店で仕入れたショコラ共々、大きなトレイを器用に抱えた司馬懿が湯気越しに微笑した。
「今年は如何過ごされましたか、子桓様?」
「別に」
絶妙のタイミングで淹れ注がれるアールグレイの、いつもながら美しい紅瑪瑙色に子桓は満足した様だ。
無造作に受け取りざま口を付けたそれが、既にほんの少しだけ冷めているのもいつもの通り。
猫舌気味の恋人の些か軽率とも云える行動は、司馬懿が完全に掌握する処のものであったから。
「毎年そうそう、代わり映えなどするものか。いつも通り普通の年だ」
お前は違うのか、いっそ素気無い様な返戻に此方はほくほくと浮かれた風情で、司馬懿が答える。
「それはもう、とても良い年でしたよ?子桓様と旅行も出来ましたし、バレンタインには喜んで頂けてクリスマスも」
「……お前、もうちょっと他に無いのか何か」
「何事も子桓様の御心次第、と云う話ですよ。ですから」
「来年も是非、幸せに過ごさせて頂きたいですね」
「だから―――」
結局またいつもと同じ年になると云う事だろう、
だってお前はいつも通り傍に居て、決して離れる筈など無いのだから。
………そう、云おうとして。
冷静に考えればそんな台詞は、大概益体も無い惚気に成りかねない、そんな危険にふと思い至り。
眉を顰めて噤んだ反論、カップを呷って諸共飲み干すと、
早くも来年分の喜びを寿ぐ様に満面で笑む男へ、子桓は二杯目の甘露を要求した。
子桓様はコーヒーよりも紅茶派だといいなと思うんだよ(勝手に)
実はコーヒー党な仲達も子桓様の為に勉強精進を重ね、
今では立派な紅茶マスターとなった模様です。愛ですね!
とりあえずほのぼのまったりな日常が書きたかったので、その意味では合格かなと。短いけど(笑)