触れて
堕ちる
其れは 何方の
彼我の吐息が、淫猥な水音に紛れて響く。
緩々と与えられる偏執な悦楽。
感応して火照りを増す身体にけれども、思考の芯はただ相反し冴えてゆく。
其れは座し触れた椅子の無機質な固さの所為か――晒した箇所を丹念に探る掌の、奇妙な冷たさ故、か。
「―――…殿下?」
凭れに深く背を預けた姿勢のまま、膝元へ落とす視線のその先に。
効率的とでも云うべきか、前だけ僅か肌蹴けて割られた、両脚の間に蹲る、男。
何やら察したのだろう、咥えていたものを開放して問う面は、こんな折ですら平静そのもの。
求めればいっそ、病的なまで鄭重にも執拗く応えて貪る、その癖に。
……何を、考えて居るのだか。
初めは何時の事であったか。
唯の戯れ、若しくは意趣返し。嫌がらせの類。
君臣の別が如何とか――嘘寒い台詞を無感動に吐く、薄い唇を噛み嬲った。
ほんの刹那の逡巡。半ば脅す様な誘いへ、表情も変えずに応じられて内心、些か驚いた。
ある意味で惰性のままに以来、仕掛けるのは大抵此方だが、従う義務も無い要求を諾々と呑み続ける其の真意は未だ量り兼ねて居る。
「…良い格好だ、と思ってな」
―――真逆、目先の欲へ容易に溺れる柄とも思えぬが。
唯一の腹心である筈の、是の男の心だけは何処か、読み切れない。
苛立ちにも似た、そんな不快感が何故か嫌いでは無いと識る、己の酔狂を笑み歪む唇で吐き捨てる。
「斯くも名高き、司馬仲達ともあろう者が。余人には想像出来まいよ」
額付く姿勢を喉で弄えば、流石に険を孕む額。
如何にも君子めいた鬼魅の悪い、偽りの謙譲が愈々剥がれるか。首筋を灼き裂く予感、一種の期待はけれど、此度も無駄なものと既に――解っていて。
「憚りながら」
「っ」
「貴方様とて相当、あられ無き御姿態でいらっしゃるかと」
しどけ無くも扇情的とでも、申し上げましょうか?
…果たして、晦匿に紛れる刃。
うっすらと凄む様な微笑、舌が伸びて過敏な先端へと舐り絡む。
そのまま手荒く扱き上げる刺激。知れず粟立つ感覚を、嗤って逸らして。
「………違いない」
或いは屈辱か―――嘲笑であるだろうか。
禍しい闇の如き瞳に、確かな劣情が揺れる態。
認めた熱へ覚える幾許かの満足、乱れた髪ごと無下に掴み寄せた。
今回は珍しく曹丕視点。
基本的に何に対しても醒めているイメージなので
ウチは懿丕と云いつついつでも懿→丕全開になってしまう訳ですが
その点では司馬懿の方が熱いヤツじゃないかなぁと
まあ曹丕の方だってそれなりに執着してるんですよ、みたいな。
どんな時に何をしててもひたすら探って謀って哂い合ってる二人だと思います。酷いな。