「――それは一体何なのだ、曹丕」
殺風景な政務室でただ一点、ぽつり燈った彩を見咎めて、三成はその目を眇めた。理知的な男が発すには些か素朴に過ぎる文言に、曹丕の口角が僅か持ち上がる。
「盛りの花の名ひとつ解さぬとは、倭
「…漢土
弄う揶揄へとすかさず返る応酬に違わず、くくれた頤が容良い耳殻と交わる一点には鮮やかな花弁。流れる黒髪をさらり梳くように、僅か覗く顳顬の白さへと八重菊の黄は良く映えた。
大国の継嗣と云う身分に照らせば、平素はいっそ地味にも見える装いの曹丕である。もう少しなり飾れば如何か――そんな小言は流石に余計な世話かと表に出さずに来たのだが、いざ目の当たりにしてしまえば中々に眩しくも艶かしい。知らず惹かれたそれを気取られまいと、三成は視線を努めてゆるりと泳がせた。
「泰山でも望むなら、茱萸も挿そうがな。『これ』の序でだそうだから仕様があるまい」
一献と掲げられる爵、揺れた水面へ漂う黄花に、重九であったと思い至る。誰だか知らぬが、長寿と栄華を祈る菊酒に託け、主の顔
「…折角だが、昼日中から酔いどれる習いは無い」
「ほう、息災を願う私の厚意を無下にするか?つれない話だ」
詰る言葉はしかし、思わせ振りな笑みを含んでいた。頑なに独り立とうと在る一方で、時に気紛れに誘う風情。厄介な公子の悪癖なら充分に弁えている三成だが、諾と呑み込むばかりは矢張り癪である。
「――ならば、此れを享けるとしよう」
性質の悪い戯れにせめても一矢と、三成は曹丕が髪に挿した燦たる菊花を選び抜き取った。指の間をすると零れゆく髪の感触は快く、些かなりと溜飲が下がる思いだ。
打算に長ける狡獪な策士か、したり顔で嗤う飢えた狼か。
何方にしても――どれ程に映え似合っていようとも、他の手が飾り立てた花は如何にも気に障る。
益体も無い嫉心を、音と成しては伝えぬ代わり。未だ馨し彼
小品すぎてタイトルもうまいこと浮かばなかった重陽節みつひ。
あたまのいい人達がひたすらぽんぽん会話してる様に滾りますが
あんまりお利巧にみえないというかだらだらいちゃいちゃしてるだけですねこれ
あと前に描いた桜な三丕絵と似たり寄ったりのシチュエーションじゃね?
って後で気付いたけどすきなんだもの仕方ない。
ちなみに先攻したのはきっと打算で渡っちゃう方です。