電話をかけたら左官屋は、今週いっぱい都合がつかないらしい。社会主義万歳だ、クソッタレ。
薄汚れた壁をブチ抜いて、そこだけひどく眩しい空の青。タバコの煙が見上げた雲に溶ける、こりゃもう中も外も同じだなと肩をすくめた。
振り返ればいつもは陰気でケチな監房も、今日に限ってはうすら明るい。派手に開いた壁の穴からシャバの光が遠慮なく射し込んでいるんだからまあ当然なんだが。
固く冷えた、ロクでもないポンコツベッドに腰かける。無駄に通りがいい風に、意味不明な印のついたカレンダーと、水耕栽培中らしいニンジンの(というかヘタの)葉が揺れた。静かだ。
いきなりキレる、反抗的な悪魔はもういない。
いつでも踊る、能天気なアホウももういない。
本当に、静かだ。これぞ心安らかなる平和ってやつだ。
どこか遠くで、乾杯の声まで聞こえてくる。祝賀パーティは今夜の予定だが、一足先におっ始めた奴がいるらしい。それでも誰も、そいつを責めない。俺だって同じだ。苦難と屈辱と脅威と恐怖が鼻先から消え去った、記念すべき日なんだから。看守の看守による看守のための独裁天国が復活する。何とも正しい監獄ライフじゃないか、Ура!
来たる平穏をしみじみ喜んでいると、廊下から浮かれた声がかけられる。秘蔵のウォトカを両手に下げた同僚が、俺を食堂へと誘った。どうやら結局のところ、みんな夜まで待ちきれないようだ。今行く、と応えて腰を上げる。
戸口で何となく立ち止まって、眺める監房はいつもよりどこか広く感じた。すっかり見慣れた、好きでそうした訳じゃないが、一時は中で暮らすハメにもなった部屋なのにおかしな話だ。
もう多分、あんな災難に出くわすことなんてないだろう。大体どうやってあの赤いのをブチ込めたのか俺は知らないし、突然脱走した理由なんて別に知りたくもない。ただ奴がそこらのマヌケな民警程度にどうこう出来るタマじゃないことは確かで、身代わりになってくれる新しい犠牲者には、心からの祝福を送ってやってもいいくらいだ。それが何の足しにもならないことくらいはまあ、当然わかっているにしても。
――奴らの気が変わって、またここをタダ部屋扱いしようなんて考えない限り、は。
そこの穴からいつの間にか、ちゃっかり戻った奴らがいつも通りキレたり踊ったりしている。…ああ、笑えない冗談だ。一瞬ちらついた、妙に懐かしいような幻覚を、タバコと一緒にもみ消した。
明日になったらやっぱり朝一番、左官屋を無理にでも連れてくる。
とりあえずはそれまでに、思いきり呑み潰れてやるとしよう。
何故だか各所で人気沸騰な昨今、「ウサビッチ」より赤緑脱走後のカンシュコフ。
厄介払いが出来て嬉しいような、それでもどこか寂しいらしい複雑看守なわけです。
つか真逆ウサビで二次創作する日が来ようとは…しかも あ の カンシュコフで(笑)
個人的には赤受けがいいなぁ双子とかなぁ(えっ)、なんて思ってますがどうなりますやら。