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 生きることは傷を負うこと
 
 誰かが云ったそんな言葉
 何時かは笑った、そんな言葉
 
 
 
 

『 蓮花抄 』      


  
  
  

 薄明の汀、私は探す。

 静謐を犯して啼く蓮のこえを。
 幽かな其れを戯れに待つ睡余の瞳を。



 焦渇の果て、私は見出す。

 仄暗き水面を淡紅に染め抜く魁の蕾を。
 誰より先に気付いては、童子の如く喜ぶ貴方が、

 貴方がもう、



 此処に居ないと云う現実を。





 咲き誇る花。
 風の馨り。空の色。
 嘗て貴方が愛し、共有した物共。

 独りで抱けば砂の如き追憶を、
 けれど数え連ねずには居られ無い。
 触れる度に灼き苛む絶望、
 手放せる筈も無い、其の痛みは何処か浄福にも似て。



「………御覧に、なっておられますか…?」



 零す呟きが届く様な。
 魂が慟哭する瞬間、刹那訪れる是の錯覚。

 風流を解さぬ私の無粋を、貴方はいつも揶揄して咎めた。
 今更何をと、貴方は叱るだろうか。
 其れとも呆れ笑って下さるだろうか、
 一輪綻ぶ蓮花に乱れて縋った、
 埒も無い是の哀れな姿を。





 時は移ろう。
 貴方を奪った季節が、復た廻る。

 是世の全てが飽かず私を拉いでゆく。其れでも。





 生命せい在る限り、私は求める。

 貴方が遺した貴方の欠片を。


 永劫貴方に繋がれる証、其の愛しきを。
 
 

 

  
 

 


 

  
58.
今、生きているというコト
   

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 命日記念、 曹丕死後に遺された司馬懿視点SSです。
オリジナルイッヒのつもりで書いておりますが、無双としても読める…かな?

叫んで掻き毟る様な絶望と、
でも何処か静謐な温みを目指したかったのですが…如何でしょうか。
お題は、独り遺された司馬懿の存在理由、痛み、みたいな連想から。

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